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ブログ27「アリとキリギリス」
2019/07/20
現代の鍼灸医学の礎になっているのが中国最古の医学書「黄帝内経」という本で、その中の考え方の一つに「陰陽論」と言うものがある。
その中に、
「黄帝曰く、 陰陽なる者は、天地の道なり、万物の綱紀、変化の父母、生殺の本始、神明の府なり」
と言う記述がある。
何のこっちゃ分からないだろう。
僕も何のこっちゃ分かりません。
要約すると、世の中のものは全て「陰」と「陽」に分けられますよ、と言う意味だ。
「陰陽」とは、例えば、男と女、裏と表、プラスマイナス、闇と光など。
「幸せ」と「不幸」もそれに当たるだろう。
陰と陽は反対の性質を持つが、陰極まれば陽に、陽極まれば陰に、いきなり変わることもある。
全財産入った財布を落とした直後に交通事故に遭い、ついでに離婚届を突きつけられ、会社も首になった男が、落ち込んでトボトボと下を向いて歩いてたら、一等の宝くじを拾ったとか(実際、そんな奴はいないと思うが・・)
不幸はいつまでも続かないし、その逆もまた然り。
という話。
「アリとキリギリス」
昔、いわゆるベンチャー企業という所で働いてみたことがある。「働いてみた」という言い方から察してもらいたいのだが、その会社にはただの興味本位で就職した。
これまでの僕の経歴から「お前、そんなんばっかじゃん!!」とか「仕事、なめんなや!」とか、感じる人も多いと思うが、はい、自分でもそう思う。
若かった僕には金も才能も何もなく、あるのはただ好奇心だけだった。将来とか、仕事の中身とか給料とかは、どうでもよくて、常に新しい刺激だけを求めていた。
だから、色々な仕事をしてきたけど、同じ職種のものは殆ど無い。
今回も、ちょっと覗く程度のつもりで(すいません。。)新橋の不動産関係のベンチャー企業の面接に行った。
当時は「ベンチャー」という言葉が世間に出回りだした時代で、その意味は全然わからなかったんだけど、イメージ的には、なんか勢いがありそうな感じで、そんな世界を覗いてみたい気持ちがあったのかもしれない。
広いフロアの中には怒号が飛び交っていた。スーツを着た普通のサラリーマン達が、今だと速攻パワハラで訴えられるであろう暴力的な言葉を大声で叫び散らしていた。
いわゆる体育会系だ。面接もその怒号の真ん中で行われた。多分、わざとその場所で行ったんだろう。
面接官は両手を広げて言った。
「こんな感じだけど、やってける?」
体育会系の空気に触発された、文化系の僕は
「うっす!」
と、生まれてこのかた、したことのないような言い方で返事をしていた。
配属されたのは「店舗開発課」というところで、支店は西新宿のアイランドタワーの中にあった。中のテナントにはマクドナルドの本社や、大手の企業なんかも入ってたりして、ウキウキと浮き上がる足を抑えながら出社した。
店舗開発と言っても、実際に企画を立てたり立ち上げの計画を立てたりするわけではなく、不動産屋なので外を回って先方に物件を紹介して契約を取るのが主な仕事だ。
僕は同期で少し年上の、宮下君という人と一緒に配属になった。
営業経験が豊富だった宮下君は、本田圭佑ばりのビックマウスで自身の出世欲を周りに吹聴してまわった。
「ゆくゆくは、会社(当時の社員数は100人くらい)のトップに立ちますから」とか
「手始めに、過去最速で契約取ってきますから」とか。
ちなみに、過去最速で契約を取ったのは本社にいる部長で、外回りを始めて3日で取ってきたらしい。
研修の段階でそんなことを言い回る若い宮下君を、社内の人達は苦笑いしながらも「まあ頑張れよ」と応援した。
実際、宮下くんは要領が良く、どんな仕事でもソツなくこなした。
「営業って、要領なんだよね。やるべきポイントさえ押さえとけば、あとは別に何しててもいいわけ」
と、営業経験のない僕にレクチャーしてくれた宮下君は、外に出ると喫茶店で一服しながら何件か電話して、それから帰社するまでパチンコ屋に入り浸った。そして会社に帰ると、手短に上司に報告だけして、さっさと帰ってしまった。
しかし、やるべき仕事は完璧にこなし話術にも長けていた宮下君は、上司からは認められていた。
ルックスは誰が見ても100点をつけるくらいの超イケメンで、仕事も出来て、話も面白い。
僕は、そんな完璧な人間が世の中に存在していることに驚いた。
課長は、よく「宮下を見習え!」と周りの社員に檄を飛ばしていた。
そして、その矛先はある人物に集中して注がれた。
同じ部署に木村さんという、三十歳くらいの冴えない雰囲気の男性がいた。木村さんは入社2年目なのだが、契約件数は未だ0だった。
契約が取れずいつも上から怒られ、コピーすらもまともにできず事務の子からも怒られていた木村さんは、毎日終電まで会社に残って仕事をしていた。
めちゃくちゃ要領が悪かったのだ。
しかし不器用ながらも、汗をかきながら一生懸命仕事をしていた木村さんことを、周りの人達は温かい目で見守っていた。
そんな木村さんへの風当たりが、ある日急に強くなった。
そう、宮下君や僕たち新人が入ってきたからだ。
親心もあってのことだろうが、課長は今まで以上に木村さんにプレッシャーをかけた。
木村さんは、一躍人気ものになった宮下くんのことを、さぞかし怨めしい目で見ていたのだろう。
そんな正反対の二人だったが、僕は木村さんと一緒に仕事をする時はその懸命さに感心し、
またその傍ら、宮下君と行動を共にする時にはパチンコに入り浸りブラブラと街を徘徊した。
どっちつかずでフラフラしていた僕には自己というものが無かった。というか、なんにも考えていなかったのだろう。
そんな店舗開発課は、思いもよらない所で混迷を極めることになる。
- - -
研修期間中は、都内の物件を見てまわったり、営業のノウハウを叩き込まれる。
不動産営業には、あるセオリーがある。
営業先ではまず、お客さんの希望に沿った「マイソク」(間取りや価格、最寄り駅などが書いてある例のアレ)と呼ばれる紙を見せて、その中から目ぼしい物件を選んでもらい実際に内見してもらう訳だが、最後に一番良い物件を紹介することで契約に結びつく確率が高くなる。なので、最初の方に紹介する物件は、いわば捨て駒みたいなもので、極端な話どうでも良い物件なのだ。
そして、早く契約に持ち込むために客の心理を操るテクニックも必須になる。客が悩んでいるとすかさず「実はこの物件、ほかのお客様にも申し込み(仮契約)いただいておりまして・・・」(ウソ)と言うのは常套句だ。焦らせてサインさせてしまうのだ。
※今、引越しを考えている人は気をつけましょう。
研修を終えしばらくすると、僕たちにも担当の客が当てがわれ、ついに外回りの営業に出ることになった。
担当になる営業先は、課長が部下の能力に合わせて決めるのだが、新人に限ってはランダムに決められた。
僕が初日に向かったのは、神田の小さな出版社で、手狭になってきたオフィスの引越しを考えているとの事だった。
その日もやはり、なんにも考えていなかった。
応接間に通され、机の上にヒラヒラとマイソクを広げていると
「ここ、いいね~」
と、出版社の社長らしき人が言った。
築年数の割に賃料が高く、立地も良くない。
いい物件では無かった。最初の方に出す、どうでもいいやつだ。
・・・・・ま、いっか。
「あ、見に行きます?」
と聞くと
「今日、行ける?」
と社長は言った。
そして、そのまま契約(その時点では仮契約)が決まってしまった。
その日、会社に帰った僕は盛大に迎えられた。
ここにきてノーマークのダークホースが急浮上することになった。
あれ?こんなやついたっけ?と誰もが顔を見合わせるような存在感の無さ。賭けをしていた先輩達は皆一様に舌打ちをした。
マグレだろう。と、みんな思ったはずだ。
でも、なんと一日。これ以上の最速はなかろう。きっと本社の部長も、苦虫を嚙みつぶしたような顔をしていたに違いない。
「すげえじゃん!」
宮下君は言った。しかし、その顔に伝う汗には焦りの色が垣間見えた。
そして、その奥から僕を恨めしそうに見ていた男。
木村さん。
その顔を覆う尋常じゃない量の汗は、恐怖を訴えかけていた。
それは僕に対しての恐怖ではなくて、その後自分に襲いかかるであろう課長のプレッシャーに対する恐怖だった。
周りの評価に反して、僕はそれから立て続けに契約を取っていった。
頭の中は相変わらず空っぽだ。
出世欲も顕示欲も、ない。
ついでに、お金ないし、彼女も、いない。
なんにもない。
頭をかっ開いて顕微鏡で覗いて見ても、覇気も、ヤル気のカケラも見受けられないようなヤツが契約を取り続け、流石に周りの見る目が変わった。
こいつ、意外と大物なのかも。と。
片や、契約が1件も取れない宮下君と木村さんは次第に焦りの色が濃厚になっていった。
増え続けるプレッシャーは毎日出社するたびに重くのしかかり、自尊心はボロボロだ。
いつしか宮本君は会社に来なくなり、木村さんも辞めていった。
そんな二人をよそに、僕は・・・・・・
給料明細を見てほくそ笑んでいた。
帰りに銀行で金を下ろすと、スキップしながらマルイに行ってブランドの時計を買った。
そして家に帰って時計をニマニマ見ていると(・・・・キモイ)今まで無かった感情がムクムクと頭をもたげた。
それまでは、嘘をつきまくって仕事を取る営業スタイルに罪悪感こそあれ、やり甲斐も感慨も、つゆほども感じていなかったのだが、薄暗い部屋でギラギラ光る時計を見ながら「フフフ・・・」と笑う僕の中で、何かがカチリと不穏な音を立てた。
そして・・・・
それから、契約が一切取れなくなった。
2ヶ月が経ち、3ヶ月が過ぎた頃、課長が手招きして僕を呼んだ。苛立ちが顔に出ている。
「最近、どうしたの?調子悪いじゃん!」
いや、どうもしてない。調子?調子は良くも悪くもない。僕は最初から何も変わっていない。実力からして、こんなもんだ。敢えて言うなら「運」の調子は悪い。僕が唯一持っていたもの、それは木村さんのような懸命さでも、宮下君のような立ち回りの良さでもなく、運だけだった。そう、ただ運が尽きただけだ。
僕は何も言えず、ゴクリと喉を鳴らした。あの時の宮下君のように、汗がひとすじ額を伝った。
プレッシャー
なんだか体が重い。いつの間にか、僕の背中にのしかかっている。
それは、僕と宮下君と木村さんの、計3人分の負荷だった。
課内のノルマは決まっている。急に2人に辞められてしまった課長は、調子に乗りまくっていた僕に、新人にはあり得ないノルマを課した。
そう、初日に平然とした顔で、契約を取ってきた大物ルーキーの僕に。
しかし、残念ながら僕はメンタルが弱い。
とっても弱い。
小学生のお嬢さま並みに、超よわよわだ。
そんな、アルプスの少女ハイジに出てくるクララお嬢さまみたいなメンタルの持ち主の僕に、そんな重たいものを支えきれるわけがない。走って家に帰って、布団をかぶって「ハイジのバカ~!」と泣きたい気分だった。
そして、いち早く危険信号を察知した僕は、逃げるようにして会社をやめましたとさ。
ちゃんちゃん。
~~~
この話から、陽(幸せ)が極限まで高まって、陰(不幸)に転化した瞬間は、お分りだと思う。
陰極まれば陽に、陽極まれば陰に転化する。
陰陽論では、そう言っている。
例えば、風邪引いたときなんかもそう。
体を冷やし過ぎると熱が出て、
熱が高くなり過ぎると寒気を感じる。
なので、「不幸だ~。わたし今、メチャメチャ不幸のドン底だ~!!わ~い!わ~い!」と、不幸過ぎて頭のネジがぶっ飛んでしまってる人は安心してほしい。必ず、陽に転化する時期が来る。
反対に、幸せ過ぎて「ウッヒッヒッ、ウヒヒヒヒヒ」と変な笑い方になってしまっている人は気をつけた方が良い。足元をすくわれる日はもう間近だ。または、その前に家族に病院に連れていかれるだろう。
じゃあなぜ一生懸命やってた、働きアリ木村さんは、結果が出ないまま、辞める羽目になってしまったのか?
もしかしたら、居場所を間違っていたのかもしれないし、あともう少しの辛抱だったのかもしれない。
それは分からないが、一つだけ言えるのは、人を羨んだり、妬みや嫉みという感情が強すぎると、いつまでも負のループから抜けられない、ということ。
僕は、木村さんが陰口を叩いてるのをよく聞いた。
「なんで俺ばっかり」とか「あいつ、いつもサボってばかりいるクセに」とか。
「課長、ぶっ殺してやる」と言った時の木村さんの顔は忘れられない。
片や、キリギリス宮下君からは、そういった話は聞いたことがない。
帰りに飲みに行った時も、上司の愚痴や木村さんの失態を笑うわけでもなく、自分の夢やスタイルを熱く語っていた。
ある日、宮下君の家に遊びに行った時、家には宮下君の彼女と犬がいた。
「捨てられてたのを拾ってきたんだけど、こんなに大きくなっちゃった」
と、宮下君は笑って言っていたが、その犬は都内の狭いワンルームで飼うには明らかに無理がある、大きな柴犬だった。
彼女はイケメンの宮下君とはちょっと不釣り合いなポッチャリした子で、その子と犬に囲まれて楽しそうに笑っている宮下君の顔を見た時僕は、いいやつだなと思った。
「アリとキリギリス」の寓話にはもう一つ側面があって、遊び呆けて食べ物が無くなってしまったキリギリスは、アリに食べ物を恵んでもらおうと頼むが、アリは「遊んでたお前が悪い」と言って拒否する。そしてキリギリスは飢え死んでしまう。
人間には、普段見えている表の部分と、裏の部分がある。
それもまた、陰陽の概念の一つで、陰の中には陽が内包され、陽の中には陰が内包されている、と言われている。
普段なかなか見ることができない裏の部分が、実は本質だったりして、
人間って複雑だよね。
ちなみに、このブラック色の強かった某会社はその後、大躍進して今では、そこそこの大企業になっている。
そのまま続けてたら、今頃は結構な金持ちになってたかも、と想像してみたけど、それでも今の方がいいかも、とも思ったりもする。
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