ココロのリハビリ20「酒に飲まれる人」

2018/10/22

以前、こんな人がいた。

 

最初からテンションが高い。「ねえねえ、聞いてよ!昨日さ~、空見てたら、雲がカメみたいな形してたの~!!すごくな~い!?」と目を丸くして言うので、「へ~」とか「ふ~ん。」とか適当な返事をすると、そのリアクションに納得できなかったのか「いや、ホンットにすごかったんだって!!あ~写メとっとけばとかった~」と、まだ食い下がる。(そんなもん、写メなんかの小さい画面で見せられたら逆にショボく見えるんじゃないか?)と思いながらも、小さなことに感動できる感覚を羨ましく思う。


 

感情が高まる閾値が低い人は幸せだ。


 

毎日、変な形をした雲を見つけて驚いたり、道端に咲く花を見て綺麗だと感じたり、夕焼けを見て切なく感じたりしたいと思うが、そんな感情も日々のルーティンの中で少しづつ削り取られていく。

 

そんなときに、ふと酒を飲みたくなる。

 

アルコールにより高揚した脳からドーパミンが垂れ流され、削られた感情も酔いとともに頭をもたげる。

 

普段から感情が豊かな人間は押しなべて下戸が多いが、いつも感情を押し殺している人間は酒が入ると乱れる。


ブレーキが外れてしまった理性は、日頃抑えているものが大きければ大きいほど常軌を逸した動きをする。


 

●●○○  ●  ●○○●●    ○●●○ ●●○○○○●●

 

 

今から20数年前、建築の専門学校に行っていた時Qという友達がいた。

 

Qとは仮称ではなく愛称だ。

 

なぜ、「Q(キュー)」と呼ばれていたのかは覚えていないが、入学した時からそう呼ばれていた。

 

 

Qは人と話すのが苦手だった。

 

話しかけると地面を見ながら、聞き取れないような小さな声で一言二言ボソボソと話した。

 

 

新聞奨学生だったQは、毎朝2時に起きて朝刊を配り、学校が終われば真っ直ぐ新聞屋の寮に帰り夕刊を配っていた。雨の日も雪の日も毎日毎日、一日も休まず配り続けた。

 

いつも物静かに集団の端っこにいたQは自分から話すことはほとんどなかったが、真面目で寡黙な性格を周りの友達は尊重しており、親しみを込めて「Qちゃん」と呼んでいた。

 

 

2年が経ち卒業式が終わると、道玄坂の飲み屋で卒業パーティーが開かれた。

 

いつも飲み会などには仕事で出れなかったQちゃんも、この日は最後ということで新聞屋の親方に許可してもらい顔を出していた。

端っこの席に座って静かに飲んでいたんだが、2次会が終わったくらいからQちゃんの様子に異変が起こり始めた。

 

ビールジョッキに向かって、一人で何かブツブツと言っている。


近くに座って聞いてみるとボソボソと「チクショウ」とか「クソ~」とか言ってる。肩を叩き大丈夫か?と聞くと、少し我に返ったようで、トイレに行くと言って席を立った。

 

程なくして2次会が終わり店の前で、次はどこ行こうかと話している僕たちの脇を、

パンツも何も履いていない全裸の人間が通り過ぎた。

 

 

Qちゃんだった!!

 

 

何が起こったのかわからず、呆然として動けないでいる僕たちを尻目に事態は進行していった。

 

 

全裸のQちゃんは、人通りの多い歩道のガードレール?(はっきり覚えていないが)のようなところに立つと、放尿し始めたのである!

 

 

いや、ただ放尿しているのではなく、明らかに通行人に引っ掛けるように「ウォ~!!」と叫びながら、オシッコを撒き散らしていた!逃げ惑う通行人。「キャー」と叫ぶ女性の声。怖そうなお兄さんの怒号。
オシャレな若者たちが賑わう渋谷は一瞬で阿鼻叫喚の地獄絵図に変わった。

 

 

そして、全裸のQちゃんはオシッコを振り撒きながら、今まで聞いたことのない大きな声で、

 

 

「ぼくはっ、Qじゃな~~~~い!!!」と、叫んでいた!

 


 

全然、意味がわからない!


 

完全にヤバイやつだ!!


 

今、街中にそんなイルボーイが現れたら、「フジテレビ 渋谷警察密着24時」カメラクルー付きパトカー緊急出動、羽交い締め&薬物チェックからのボレーシュートで留置所ぶち込まれコース確定なんだろうが、当時はまだバブルのカオス臭の残りが漂う東京だ。おおらかな時代というか、そんなヤツあちこちにいたのかわからないが、警官はやって来ず友達に両脇を抱えられQちゃんは家に帰された。

 

 

 

 

ぼくはQちゃんが叫んでいるのを聞きながら、入学した時のことを思い出していた。


 

入学して数日たったある日、友達から紹介されたQちゃんは金髪にリーゼントのバリバリの不良ルックだった。


 

「よろしく~!」と挨拶すると、慣れないツッパリの格好をした少年は地面を見ながら、か細い声で「よろすく。」と訛りながら答えた。

 


 

たぶんQちゃんは東京に来て、新しい自分になりたかったんだろう。

 

日頃溜め込んでいたストレスは、過酷な新聞配達や、友達からQと呼ばれていることなんかじゃなく、変わりたくても変われなかった自分への憤りだったのかもしれない。

 


 

卒業して社会に出るといろんな酒癖のある人と飲む機会が増えた。


 

笑い上戸、泣き上戸、いきなり怒り出す人、からむ人、セクハラが増すおじさん、キス魔のゲイ、愚痴っぽくなる人、説教が始まる人、酔っ払い以上にテンションが上がる下戸など。


みんな、スマートに生きたいと願う。憧れているあの人のように。隣にいるあの人と同じように。毎日、抑えつけられた感情は澱のように少しずつ溜まり、溢れ零れ落ちそうになった時にその姿を現す。

漸く顔を覗かせたその姿はただの汗臭い人間で、その姿を見た時に初めて安心する。自分と同じだと。

 

 

 

酒癖が悪い人と飲んだりすると(早く帰りたい~)と思いながら、Qちゃんのことを思いだしたりする。


 

トイレに立つその人の後ろ姿を見て、ちょっと期待したりしながら。




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