ブログ19-2「天国と地獄2」

2018/10/12

バス停に自販機があった。

 

ホットココアを買って飲むと少し体が内側から温まったが、またすぐに冷えて寒くなり、結局、三杯も飲んでしまった。

 

たぶん、その時の僕の膀胱はビールとホットココアでタプンタプンだったはずだ。

バスに乗る前にトイレに行っておこうと思っていたのだが、その時は寒さと疲労で一刻も早く帰りたい気持ちの方が強く、結局トイレには行かなかった

 

やっと来たバスに乗り込みホッとするのもつかの間、出発して10分程経った時に体のある異変に気が付いた。



 

・・・・ちょっと、オシッコしたいかも。


 

30分経った頃には僕の尿意は、チョットからケッコウをとうに通り越しており、既に「ヤバイ」領域にまでに達していた。

 

出発してからまだ30分位しか経っていない。高速道路に入ったばかりだ。富士山から新宿までの途方も無く長い道のり、渋滞などもあるだろうし時間も相当かかるはずだ。

 

なんて所に来てしまったんだ。しかも、ビーサンで。

 

行く時はあんなに早かったのに、一向に進んでいる感じがしない。進まないバスに逆行するように加速する尿意。

 

 

気が遠くなる。

 

 

「ヤバイ、膀胱がはち切れそうだ!」

 

違うことを考えろ!

 

そうだ、フジロックの会場に着いた時の幸せな瞬間を思い返せ。

 

ビールを飲みながらほろ酔いで海外のロックバンドをのんびり聴いていた、ほんの数時間前の幸せな瞬間。


 

ビール・・・
 

 

ダメだ、「ビール」という単語はすでに「オシッコ」とリンク付けされており、思い出した途端、破裂寸前の膀胱に意識がいってしまう!



なんであんなに飲んでしまったんだ!ビールもココアも。バカなのか?

なんでバスに乗る前にトイレにいかなかったんだ!


遠足の休憩の時「トイレ、行ける時に行っておきなさい」と言っていた先生の声が頭の中で反響する。


30分前の自分の襟首掴んでトイレに連れて行きたい。

 

バスの中は補助席まで満員御礼のすし詰め状態でトイレはなく、途中休憩で止まる気配もない。

 

ダンスと寒さにより憔悴しきったロックキッズ達がひしめき合う車内はまるでお通夜状態だ。
咳払いやヒソヒソと話す声しか聞こえない静まり返った車内で「オシッコ漏れそうなのでどっかで止まってください!!」なんて大声でいう勇気もなく、バスの揺れとともに尿意が増幅していく。

 

 

もう、限界だ!!


その時、ある考えが脳裏を横切った。


 

「いっそのこと、漏らしちゃおうか。

 

どうせ、雨で衣服もビチャビチャだし。」


そう考えると少し気が楽になった。


そして、よし!(何がだ!?)と思い、
 

つまようじ程の太さになってしまった理性の柱がミシミシと音を立て始め、意識とともに体(主に下半身)から力が抜けていった

その時、

 

「大丈夫ですか?」という声がした。

 

隣を見ると、20歳くらいのロッカー風の女子が覗き込むようにこちらを見ていた。

 

よほど具合悪そうな顔をしていたのか、それともマジでオシッコちびりそうな顔をしていたのかわからないが、その声が僕の折れそうな理性をギリギリの所で支えてくれた。

 

そして声をかけられた瞬間、僕はおかしな行動に出た。

 

抱え込んでイスに上げていた両足をおもむろに下ろすと
 

「大丈夫。全然」と言ったのである。

 

もちろん、全然大丈夫なんかではない!

 

「尿意」に「ええかっこしい」が勝った瞬間だ。

 

 


 

その後は地獄のようだった。

 

常に隣の女子に見られている視線を感じる。

もちろん、1ミリも見られてなどいない。


それは僕の過剰な自意識が作り上げた幻覚だ。

 

足を下ろした分、前よりもタプンタプンのココアビールが膀胱を刺激する圧が強い。もはや尿道括約筋の力だけではこいつを押さえつけておくのは困難だ。

周りの筋肉にも緊張が転移してきた。

しかも、常に視線を感じるので背中がピキピキだ。


 

(く、くるしい・・・・というか痛い!)


 

まるで、生き地獄だ。


 

彼女の一言で状況はだいぶ変わってしまった。

 

その時、隣に座ってるのが浮浪者みたいなおっさんだったら良かったのに、と思った。

 

たぶん、出発して10分で漏らしていただろう。


 

話などして気を紛らわせたかったが、表情筋を緩めた途端、僕の破裂寸前の膀胱は決壊するだろう。


 

想像してみた。


 

隣にいる知らない男と好きなバンドなどの話を和気藹々としていたんだけど、実はそいつがオシッコダダ漏れ状態だったとわかった時のことを。


 

"ショック!!バス中の惨劇!逃げ場のない密閉された空間の中、足元に徐々に浸食するオシッコの恐怖!"

 

隣に座っていたA子さんは当時の様子をこう語る

「なんか、へんだなぁ~と思ったんですよ。最初は普通にお話ししてたんだけどぉ~。なんか、ふと気づいたら床が濡れてて~。え!?何処から?と思って、その人の顔見たらすごい形相で~!

あれからもう知らない男の人と話すのが怖くなってしまって、もう一生結婚できないかも・・・・」


こわ~

 

パニック状態の人間が陥る突飛な想像が、アドレナリン絶賛放出中の脳内のテレビに映し出された。

 

若い女性にトラウマ級のショックを与えてしまう。

 

ああ、僕の豊かな想像力よ。


このバスをトイレのある場所へ、飛ばしてくれ!!

 

 

 

 

そして、出発してから約3時間。

 

最後は、あしたのジョーの最終ラウンドのような「こいつ、立ってるだけで精一杯なのに、どこにそんな力が!?」みたいな力が僕の尿道括約筋や仲間たち(他の筋肉)にみなぎり、なんとか終点の新宿まで乗り切ることができた。


 

ありがとう。僕の過剰な自意識。

 

ありがとう。尿道括約筋

 

 

 

新宿に着くなり、ペコっと頭を下げバスを飛び降りて猛ダッシュで眠らない街へ消えていった男、隣でずっとプルプルしてた男を見た時に、ロック女子は初めて気付くはずだ。


 

「あ、あの人トイレ我慢してたんだ。」と。

 

 

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無事に用を済ませると、外はいつもの蒸し暑く騒々しい東京の夏の夜だった。

身体の内側にはまだフェスの熱狂が残っており、不思議とまたあの極寒の山へ戻りたいと思った。チケット代わりのリストバンドは、しばらく外したくなかった。

 

泥だらけで電車に乗ると、隣の車両にも同じように泥だらけでフジロックのリストバンドをしているタトゥーだらけの兄ちゃんがいて、目が合いお互い苦い顔で少し笑った。

 

「いろいろ大変だったけど、まあ楽しかったよね」と目が語っていた。

 


 

 

後日談

 

次の日、台風一過て晴れ渡った会場は目も当てられないほどのすごい惨状で、2日目の公演は中止になったそうです。



そして一緒に出掛けたはずのKといえば、ビールをバカ飲みしたおかげでお腹を壊して、何時間もトイレにこもっていたらしい。
 

しかし、トイレの中で体力を温存していたのか、レッチリはしっかり観れたらしく、「レッチリ観ないで帰ったの?ありえねえ~!」とか言われ、お前が言うなよ!と思ったが言葉には出せなかった。



(おわり)


●●○○  ●  ●○○●●    ○●●○ ●●○○○○●●
 

 

そんな、どうでも良い話を思い出し、

どうでもいいことばっか覚えてるな。

 

と、思った今日この頃。



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