ココロのリハビリ19「天国と地獄1」

2018/10/12

誰しも若い時の苦い思い出はいくつかあると思う。

 

顔から出た火によって焼却してしまいたくなるような青臭い記憶も、年とともに良い思い出になるというが、その頃とあまり変わってない今に気付き、また記憶の蓋をそっと閉じて見なかったことにしたくなる。



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さかのぼること、今から21年前。1997年の夏。

 

給料の全てをCDやライブなどにつぎ込んでいたため食べるものが無くなり、タンポポやぺんぺん草を食べながら、文字通り「草食男子」として20年ほど時代を先取っていた僕は、日本でロックフェスティバルをやるという記事を雑誌で見た。

 

当時日本でまだほとんど行われていなかったロックフェスに憧れていた。

海外で有名なフェスは、イギリスのグラストンベリーやアメリカのロラパルーザなどで、ニルヴァーナやオアシス、レディオヘッドなど、その時代の最先端のミュージシャンが挙って出演していた。

 

しかし、雑誌に書いてあった日本で新たにやるというロックフェスの名前を見て愕然とした。

 

「フジロックフェスティバル」

 

正直、名前ダサいと思った。

 

フジという言葉にはロックの匂いが感じられず、ロックフェスというより、まるでフ◯テレビが主催する金儲け主義のコンサートのようだ。

 

どうせ、薄っぺらいミュージシャンしか出ないやつだろうな、と思いながらラインナップを見てみると

ワンマンでライブをすれば、大きなホール級のライブ会場でも数分でソールドアウトしてしまうようなバンドの名前が、ずらりと並んでいた

そして、当時擦り切れるほど聴いていたred hot chili peppers(通称レッチリ)がヘッドライナーだった。

 

流行やブランドに極めて弱かった僕は、一瞬で手のひらを返した。

 

 

程なくして同じくレッチリファンの友人Kと、初めてのロックフェスに行く準備を始めた。
 


 

当日の天候は、会場となる富士天神山スキー場付近に台風が直撃する予報だった。

 

山の天気は荒れる。

 

多分、現地の人からは無謀だと思われただろうが、フェスは予定通り行われた。

 

高地は夏でも冷えるという前情報があったにもかかわらず、日本の夏は隈なく暑いと思い込んでいた僕たちは完全に山をなめていた。

 

KはジーパンにTシャツ、手ぶら。

僕は短パンにTシャツ、ビーサン。もちろん手ぶらだ。

 

バカ二人は、湘南に行くスタイルで富士山に向け出発した。

 

会場までの道中は、ベースのフリーがヤバイとか、ギターのジョンのリフが渋いとか、大好きなレッチリの話を女子高生のようにキャーキャー騒ぎながら移動していた。

 

そして、海水浴に行くようなテンションで会場に着くと、同じような格好をして同じようにはしゃぎまくっている外人やフジロッカー達が沢山いて、さらにテンションが上がりビールを飲みまくった。

(数時間後、このビールが僕たちの身に起きる悲劇の元凶になるともつゆ知らず。)

 

日中はまだ良かった。雨は少しパラつく程度で寒くはない。

ビールを飲みながらいろんなライブを見て、フェスの空気を楽しんでいた。

 

しかし、日が沈むにつれ徐々に雨と風が強くなり少し肌寒くなってきた頃、異変が起こり始めた。

 

Kがお腹が痛いと言い始め、頻繁にトイレに行くようになった。

しかも、やけに長い。

あきらかにビールの飲みすぎだろう。

 

だんだん待つのにも飽きてきて、一人で屋台などをふらふら歩き回っていると、いつのまにかKとは逸れていた。

携帯は繋がらず、探すのもめんどくさいので別々に行動することした。

 

日が暮れ雨風が強くなると、寒くなってきたので持ち歩いていたビールは捨てた。

 

ライブは後半に入り、レッチリの次に楽しみにしていたrage against the machineが始まった。嵐が更に強くなりかなり寒かったが外人ばかりのモッシュピットで、もみくちゃになりながら体を動かしていると汗をかくほど熱くなった。

 

ライブが終わって少し座って休憩しているとあっという間に体が冷たくなってきた。

汗をかいた分、さっきより寒い。

 

レッチリの前は日本のロックバンド、イエローモンキーだったが、その頃の僕には「テレビに出てるようなバンドはロックじゃないから絶対に見ないし、聞かない。」という、誰に対してのアンチテーゼなのかわからない変なこだわり(というかただの偏見)があり、当時テレビに出まくっていたイエモンは見ないとKに宣言していたので、次の出番のレッチリまで座って待つことにした。

 

しかし、大トリの前ともなると演奏時間はそれなりに長い。しかも、フェスは出演者ごと全器材を入れ替えるのでインターバルも長い。

 

早く終われと願う。

 

しだいに雨は強くなり横から殴られるような風吹でびしょ濡れになった。

メチャクチャ寒い。

多分、東京の12月くらいの温度だろう。しかも、短パンにビーサンだ。むき出しの足先はしびれ始めた。

  

主催者側からの毛布の配給や暖かい食べ物の屋台には長蛇の列ができていて、まわりを見渡すと雨をしのぐためゴミ袋や毛布を被り、寒さに凍えガタガタと震えているフジロッカーたちで溢れかえっていた。

 

災害の空気が漂い始めた。

 

まるで遭難だ。(みんな、勝手にいるだけなんだが。)

 

寒すぎて脳みそも凍結してしまったのか。

だんだん何をしているのか、わからなくなってきた。

 

もうダメだ!   帰ろう。寒すぎる。

 

rageのライブが終わって15分ほどしか経っていなかったが、札付きの寒がりで堪え性の無さも折り紙つきだった僕は、あと1分座っていたらコチコチの雪だるまになっていたはずだ。

 

さよなら、レッチリ。

さよなら、K。(もう、探す気全くなし)

 

また、何処かで会おう。

 

ゾンビのように出口に向かって歩く敗者たちに促されるように、振り返ることなくバス停に向かった。

(つづく)

 


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